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掌編。超短編。など、名前は様々。
一瞬を切り取って、読んでくれる人に届けたい。
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Meta-interactive

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「それでも、私たちは転がっていかなければいけないと思う」  彼女が大きく息を吐く。 「であるなら、僕らはもっと身軽にならないとね」  僕は息を潜める。 「でも、置いていけないものもあるわ」  彼女の声がキラリと尖る。 「それでも縋りつく何もかもを抱えていくことは出来ないよ」  僕は静かにそれを受け流す。 「だとしたら、どうやって取捨選択するのかしら?」  彼女の眼差しが来世に向けられる。 「成り行きに任せるのが良いと思うけれ...

pale asymmetry | 2025.03.07 Fri 21:33

Moonlight Soda

JUGEMテーマ:ショート・ショート    十六夜の深夜、僕らはベランダに椅子を並べて、夜空にシャボン玉を飛ばしていた。本当は花火をしたかったのだけど、家中を探しても花火を見つけることが出来なかったのだ。代わりに彼女がシャボン玉セットを見つけ出したので、僕らはそれで手を打つことにしたのだった。 「月影って、子供の頃は影だと思ってたわ」  宙を漂うシャボンに目を向けたまま、彼女が呟く。風が弱かったから、シャボンはすぐに崩れることなく、宙で緩やかに踊った。その表層に月光を分解したいくつ...

pale asymmetry | 2025.02.14 Fri 20:07

雨と苗とラジオ

JUGEMテーマ:ショート・ショート    家に帰ると、彼女が胸にラジオを抱いてソファーに横たわっていた。リビングの天井の方に真っ直ぐに顔を向け、姿勢良く横たわっていたので、まるでラジオと一緒に棺に収められているように思えてしまった。部屋はすでに薄暗くなっている。日暮れにはまだ少し早い時刻だったけれど、一日中降り続く雨のせいで、世界には陽光が不足していた。僕は壁のスイッチに触れ、部屋の明かりを灯す。完成されたこの部屋のバランスを崩すことになるだろうと思えたから少し気が引けたけれど、彼女...

pale asymmetry | 2025.02.13 Thu 18:26

そととうち

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「枠のなかはどんなの?」  玄関の扉を開けると、そこに立っていた甥っ子がいきなりそう言った。何故か和服姿だった。漆黒の単衣に袴、襟と袖と裾に朱の差し色が入っている。寒くないのだろうか。でもよく見ると和服の下に温かそうなインナーが見えたので、大丈夫なのだろう。 「枠の外は広いよ」  甥っ子はその場で二度三度と跳ねる。唇に薄い紅が引かれていた。姉が施したのだろうか。それとも甥っ子が自分でやったのだろうか。 「お入り」  扉を開けたまま、僕...

pale asymmetry | 2025.02.02 Sun 20:55

New moon dream

JUGEMテーマ:ショート・ショート    エイリアンたちのパーティーは、延々と続いている。それが永遠に続いたとしても私には無関係の事象だから、それを終わらせたいとも思わないし、不快感を感じることもない。ただ私には解らない。エイリアンたちがそのパーティーの何を楽しんでいるのかが。本当にさっぱり解らない。祭りのような神性は微塵も存在しないし、ある種の性的な興奮もそこにはない。ただ罵り合い、辱め合い、笑いながら怒り、間抜けを演じることの何処にも魅力を感じることは出来ない。でも遠い昔、私もエ...

pale asymmetry | 2025.01.30 Thu 20:56

Transparent colors

JUGEMテーマ:ショート・ショート    僕らは何処で眠れるのだろう? そんなことを考えながら閉じた傘で空を突き刺す。銀鼠の群は僕の傘に怖じ気づくこともなく、全てを喰らい尽くす勢いで北から南へと行進している。子供らを掠っていこうとしているのかもしれない。いや、笛の音は聞こえない。黄昏時まではまだ遠い。 「翼が欲しいのなら、あげようか?」  年老いた少女が下品に笑う。彼女はきっと何もかもを知っているのだ。つまり僕らの過去も、僕らの未来も、僕らの螺旋も、僕らの来世も。でもたぶん僕らの...

pale asymmetry | 2025.01.25 Sat 20:46

Linoleum Silence

JUGEMテーマ:ショート・ショート    リノリウムの廊下は長く真っ直ぐに伸びていて、仄暗く光に満ちていた。つまり私が歩いているその辺りは仄暗かったのだけれど、果てしなく延びる廊下のその先は光のハレーションに遮られるように隠されていたのだ。山葵色のその廊下は歩くたびに鈴のような音が響く。それが心地良くて私は歩みを止められなかった。あの光の内部は楽園だろうか。それとも桃源郷によく似た地獄だろうか。そんなことを考えながら小走りしたりして鈴の音を楽しむ。すると不意に脇道があることに気づき立...

pale asymmetry | 2025.01.22 Wed 21:15

ふわふわと落下したりする

JUGEMテーマ:ショート・ショート    休日の午睡から目覚めると、いつの間にか彼女が帰ってきていて、ダイニングキッチンの大きなテーブルをじっと眺めていた。リビングのソファーからそっと身を起こして、僕はその様子を窺う。西側の窓から斜めに陽光が差し込み、彼女と長方形のテーブルを光の内に閉じ込めていた。危ういバランスを保つことで完成されているアートのように思えて、僕は息を止めた。 「ただいま」  彼女が僕に気づいて手招きする。バランスは崩れてしまったけれど、僕は呼吸を再開する。 「...

pale asymmetry | 2025.01.18 Sat 20:29

仄暗い世界と不確かな言語

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「今日の世界は仄暗いわね」  カーテンを少しだけ開き、窓の外を見つめながら彼女が呟く。その声は暗くはなく、どちらかと言えば嬉々としているような口調にも思えた。けれどその横顔はとてもフラットで、冷静に風景を捉えて分析しているように見える。結局のところ、その言葉の意味は不確かで捉えようがなかった。 「強い寒気が南下しているらしいよ」  ソファーで文庫本を読んでいた僕は、顔を上げて彼女を見つめる。彼女は僕の声に軽く肩を竦め、窓辺からソファーに戻...

pale asymmetry | 2025.01.09 Thu 18:47

The story of loss and the second new moon

JUGEMテーマ:ショート・ショート    混み合うレストランで、隣の席の会話が聞こえてくる。それは喪失の物語のようだった。隣の席には二人の老婦人が向かい合って顔を寄せ、ひそひそと話していた。店内はノイズに溢れていたけれど、何故かその潜めた声が漏れ聞こえてきた。それは猫の死だった。突然猫が血を吐いて死んでしまった、という話だった。前日までは普通に暮らしていた猫が、ある朝突然動かなくなり、その日の夜には血を吐いて逝ってしまったのだという。老婦人たちはその会話の途中から涙を滴らせていた。そ...

pale asymmetry | 2025.01.03 Fri 18:10

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