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JUGEMテーマ:ショート・ショート 庭の端っこで、釦を見つける。強い光沢の黒い釦。思わず衣服を見回す。そんな釦はシャツにもズボンにも見当たらない。少し笑ってしまう。今日落としたわけではないのだ。その釦はかなり汚れていたから。曇り空の弱い陽光に翳して、色々と記憶を手繰ってみる。でも、その釦がくっついている服を思い浮かべることは出来なかった。鳥が運んできたのだろうか。あるいは最近よく訪れている猫が持ち込んだのだろうか。どちらもありそうだけれど、確信することは出来ない。それよりももっ...
pale asymmetry | 2026.03.23 Mon 17:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 季節の変わり目には大抵体調を崩してしまう。ここ最近も調子が悪く、しばらくの間ぐうたらと過ごしていた。一日のほとんどを眠って過ごし、それも何処までも深く眠って過ごした。眠っている間に何度も夢を見た。内容は一つも憶えていないけれど、濃密な夢だった印象だけが体内に残っている。そしてようやく暮らしを取り戻そうという気分にまで回復したのが今日だった。そんな僕の気分を待っていたかのように、玄関のチャイムが鳴る。扉を開けると、甥っ子が両手で大事そうに画用紙...
pale asymmetry | 2026.03.20 Fri 19:58
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「早春は緑の指」 君は得意げに言う。僕にはその意味がよく解らない。強い陽光に自分の指を翳す。もちろんその指先は緑に染まってはいない。 「あなたの指はまだ緑に染まっていないね」 君は僕に自身の指を翳す。開いた手の指先は緑に染まってはいない。僕に見えないだけなのだろうかとじっくりと見つめたけれど、やっぱり君の指先は緑に染まってはいない。 「私たちは、まだ早春の内にいないようだね」 君はそう言って笑う。その笑顔は何処か寂しそうにも見え...
pale asymmetry | 2026.03.16 Mon 15:56
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたはその子のことを犬だと言った」 君は眠そうな顔で目を擦りながら話し出す。 「金茶色の長い毛に覆われていて、顔や耳の感じも良く解らなかった」 僕が用意したエスプレッソに口を付け、顔を顰め、すぐに幸せそうに笑う。 「あなたはその子を抱き上げて、大きくはならない犬種だろうと言った」 君はクロワッサンを小さく千切って口に運ぶ。それを飲み込むまでの間、君の声は途切れる。 「でもね、わたしはこの子は猫に違いないと思っていたわけ。あ...
pale asymmetry | 2026.03.15 Sun 17:59
JUGEMテーマ:ショート・ショート 喉の奥で甲虫は微睡んでいる。喉の奥で、甲虫が微睡んでいるわけではない。この違いをはっきりと理解していなければ、奈落に落ちることになる。 「甲虫に掠われないように」 君が何かを企むような顔をして言う。企んでいるのは君だけじゃない。僕だってそうだし、たぶん世界中の誰もがそうだ。皆天使ではない。天使にはなれない。それでも極楽に身を浸したいと思っているのだ。 「掠われたって良いと思ってしまう」 僕がそう言うと、君は顔を顰める。あらかじめそ...
pale asymmetry | 2026.03.14 Sat 18:38
JUGEMテーマ:ショート・ショート 強い北風が炎を吹き消そうとしている。いや、本当はそうではない。北風は強く吹いているけれど、炎を吹き消すために吹いているわけではないのだ。二つの事象に関係はないはずなのに、その二つを同時に観察することで、そこに因果あるように感じてしまう。それは私が浅はかだからだろう。そしてあなたもきっと浅はかなはずだ。もちろんそうであるからこそ、私もあなたもつつがなくこの世界で暮らしていけるのだ。強い北風に翻弄されることなく、あるいは翻弄されたとしても目的地を...
pale asymmetry | 2026.03.13 Fri 21:00
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「夢のなかで夢を見たことある?」 北風の冷ややかさと陽光の鋭さが切磋琢磨する午後に、彼女がそう尋ねてきた。 「夢を見ている夢を見たことがあるかってこと?」 僕が問い返すと彼女は首を傾げ、少し考え込む。そしてすぐに頷く。考え込んだ振りをしただけかもしれない。 「そうね。そういうこと」 「あるよ。何度もある」 僕の答えに満足げに頷き、彼女は軽くスキップする。僕らは海辺の遊歩道を並んで歩いていて、そこから見える水平線は、キラキラと鋭...
pale asymmetry | 2026.03.10 Tue 20:20
JUGEMテーマ:ショート・ショート クロネコが優雅にダンスする。ようやく空気が朝の色を纏ったくらいの時刻。アスファルトの路面を軽やかに蹴り上げ、それは約束された世界へと入門するための儀式のように、クロネコは宙を舞う。四肢の先っぽまで、尻尾の先端まで、そして両耳の端っこまで、全てが制御されていて、その細やかな位置情報にさえ意味があるのだろうと思わせる。そういう舞踏を見つけて、私は立ち止まる。そして、ああここは世界の辺境なのだなと思ったりする。このように精密な意味を有する事象が、世...
pale asymmetry | 2026.03.08 Sun 18:35
JUGEMテーマ:ショート・ショート フラスコの中では二匹の金魚が泳いでいる。けれどその金魚は実体を有していない。それはホログラムだった。だからフラスコも本物のそれではなく、内部にホログラムを映し出す装置で、フラスコのような見た目をしているだけだった。二匹の金魚は金と銀と朱と黒の色彩を纏い、それを錦の紋様と呼んで良いのかはよく解らなかったけれど、綺麗だった。僅かに煌めいて見えるのはホログラムの性質ではなく、窓から差し込むやわらかい陽光のせいだった。それは決して強くない日差しだった...
pale asymmetry | 2026.03.03 Tue 18:10
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それは本当にささやかな事象で、些末な事象なんだ」 僕は強い日差しを眼差しで追いかけながら口にした。 「つまりは小さな事象ね」 彼女は水平線に目を向けて、まるで啓示のように言う。「小さな」という表現が適切なのかどうかは僕には解らなかった。けれど彼女がそう言うのなら、それはそうなのだろうと思った。僕は「小さな」事象について語っていたのだろう。 「失われたとしても、世界が傷つくことはない」 言いながら、僕は足先を軽く跳ね上げる。裸足...
pale asymmetry | 2026.02.24 Tue 18:00
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