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JUGEMテーマ:ショート・ショート 午後になるとベランダは日陰になる。それを待って僕らは椅子とバケツを並べた。クーラーボックスにはたっぷりの氷。それにグラスとスコッチウイスキー。バケツに張った水に足を浸して、僕らは青すぎて銀色にハレーションした空を見上げて目を瞑る。 「夏だね」 彼女の声に一瞬目を開き、眩しすぎてまたすぐに目を閉じる。 「もちろん」 僕が応えると、彼女は笑う。 「あなたが夏にしたみたい」 彼女がグラスを僕の頬にくっつける。ひんやりとして心地良か...
pale asymmetry | 2023.07.23 Sun 21:27
JUGEMテーマ:ショート・ショート 雨の粒は大きくて、僕らを侵略しようとしているように思えたので、僕は君のリュックが心配になった。君のリュックは薄い布製だったから、きっと希薄な自我しか持っていないと思えたんだ。 「濡れても大丈夫なの?」 僕がリュックを指差して尋ねると、君は首を傾げてそれから軽く肩を竦めた。素早い計算で、それが些末な事象であることを突き止めたみたいだった。 「この世界に、濡れてはいけないものなんてないのよ」 君は立ち止まり、気持ちよさそうな顔を空に向...
pale asymmetry | 2023.07.18 Tue 21:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 橋を渡ってあの子らは行ってしまった。海を見下ろし笑い合っていたようだ。あるいは叫ぶように歌っていたかもしれない。虹の七色を称える歌だったような気がした。風は際限なく強まり、私とあの子らを引き離してしまった。無邪気な想いは二年の歳月を超えて、結局私のもとに届くことはなかった。そういう世界に私は生きているのだろう。 右往左往を繰り返し、あの子らの望みを叶えようとしてみたけれど、非力な自身を憂うばかり。でももっと大きなものが支配する世界にいるの...
pale asymmetry | 2023.07.17 Mon 21:32
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「重い頭痛がするの」 そう言いながら、彼女は両方のこめかみを両手の人差し指で押さえる。開いてはいけない箱の蓋を押さえるように。ソファーに横たわり、天井に顔を向け、でも天井よりもずっと遠い場所を見つめていた。 「大丈夫?」 僕はソファーに歩み寄り、膝をつく。部屋は薄暗く、窓は閉め切られている。エアコンディショナーの稼働音だけが、部屋の秩序を保とうとしている。きっと彼女はまだ明るいうちに帰ってきて、ここに横たわったのだろう。僕が戻るまで、...
pale asymmetry | 2023.07.12 Wed 20:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家中の窓を開け放てばどれくらいの風が流れるかを僕らは試してみた。その結果、動き回って僕らが攪拌した空気以外に風を感じることは出来なかった。 「私たちを取り囲む風景に風がなさ過ぎるのよ」 彼女が大きな溜息を零す。それは風にはならず一瞬で消えた。 「お昼にしましょう」 彼女が用意した冷やしうどんにタコをトッピングして、僕らは南に面した窓辺に並んで腰掛けた。南の空は眩し過ぎて青くはなかった。それは賑やかな銀色で、夏そのものの色だと思えた...
pale asymmetry | 2023.07.02 Sun 19:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「見て」 夕食の後、彼女がテーブルに小さなモニタを立てる。 「綺麗なの」 彼女がモニタの電源を入れると、そこには流麗な紋様が顕れた。色とりどりに流れ、絡まり上昇したり下降したりする紋様だった。 「これは?」 紋様はときどき煌めきを放ち、確かにとても綺麗だった。煌めきは些末な、だからこそ重要な想いの欠片のように想えた。 「これは夢なの」 「夢?」 「そう、夢。睡眠時の夢。AIに夢を見させているの」 「どんな夢を? それとも自...
pale asymmetry | 2023.06.29 Thu 21:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 三日間の出張から彼女が帰ってきた。その日数の割には大きなキャスターバッグとA4サイズの茶封筒を持って。彼女はその茶封筒をとても大切そうに胸に抱えていた。 「出張先の街の駅前に似顔絵描きの人がいたの」 リビングのソファーに落ち着くと、彼女がそう切り出す。僕はミルクたっぷりのカフェオレを淹れ、二つのカップをテーブルに並べた。 「そういうのって、サンプルみたいなのを何枚か展示してあるじゃない」 彼女がカップを手に取り口を付ける。満足そうに...
pale asymmetry | 2023.06.20 Tue 18:52
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「戻ってきて。もう浮かび上がる時間よ」 彼女の囁きで目を開ける。薄暗い部屋。微笑む彼女。その指先が僕の鼻の頭を撫でていた。 「何時?」 「もう二時を過ぎたわ」 それはもちろん午後の二時のことだろう。十二時間以上眠っていたことになる。損をしたような得をしたような不思議な気分になる。 「傷ついていたのね」 どうだろう。僕は傷ついていたのだろうか。それに関する具体的な事象は何も思いつかないけれど、彼女がそういうのならそうなのかもしれ...
pale asymmetry | 2023.06.14 Wed 20:51
JUGEMテーマ:ショート・ショート 『迎えに来て』 彼女からのメッセージ。仕事が休みだった僕は、リビングで古い映画を見ていた。外は雨。そういえば彼女は傘を持っていかなかったなと気づく。仕事が終わる時間には随分と早い気がしたけれど、彼女の分の傘を持ち、僕自身のための傘をさしてバス停へと向かう。 『泳いでるわ』 バス停が見えてきたところで、また彼女からのメーセージ。バス停には彼女の姿が見当たらない。バス停の脇のビーチに目を向けると彼女の鞄と上着。真っ直ぐに降る雨。凪を纏った...
pale asymmetry | 2023.06.07 Wed 21:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「何処がいいと思う?」 彼女がそう訊くから、僕はいくつかの場所を思い浮かべ、今日の最適解を考えた。例えば今日朝一の彼女の笑顔や、朝の天気予報で見た気圧配置や、実際に感じた空気のざらつきや、陽光の潤み具合、それに鳥の声の飛翔角度なんかを変数として。 「バス停の裏のビーチに行こう」 僕がそう言うと、彼女は大きく頷く。きっと彼女も同じ解に辿り着いていたのだろう。そんな感じの頷きだった。僕らはワンショルダーのボディバッグにスキットルとカップを...
pale asymmetry | 2023.05.29 Mon 21:06
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