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JUGEMテーマ:ショート・ショート 『高次厳重注意』 彼女から贈られてきたダンボール箱の側面には大きな文字でそう記されていた。その文字は丁寧な丸みを帯びていて、厳重に注意しなければいけないという言葉の意味とは裏腹に思えた。だからとくに注意することなく、僕は箱を開けた。中には小分けにパッキングされたお茶っ葉のような物がいくつか入っているだけだった。どこにどのように注意する必要があるのか、僕には解らなかった。例えば保管方法が独特なのかもしれない。そんなことを考えて、彼女に電話する...
pale asymmetry | 2025.12.09 Tue 15:26
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたはイルミネーションのような現象なのだと思う」 唐突に、隣の彼女がそう呟いた。僕らは海沿いのパーキングに停めた車中にいて、冬の黄昏の水面を眺めていた。海は東に面していたから、サンセットは見当たらない。それでも海面は茜の色を帯びていて、冬の風がその茜を擽っている様は、いつまでも眺めることが出来た。サンセットが見られないせいなのか、そのパーキングには僕らの車以外に駐車している人はいなかった。 「イルミネーション?」 僕は彼女に顔を向...
pale asymmetry | 2025.12.07 Sun 17:58
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「玄関の扉を開けたら、そこにカンガルーが立っていたの」 リビングのソファーに寝転ぶ彼女が、窓の外を見つめて言う。北側の窓で、見えない風の存在を感じることが出来る。別に硝子面が振るえているわけではない。何かが、例えば枯葉とかが跳び回っているというわけでもない。それでも、窓の外には強い風が流れていることが解る。そういう存在感のある北風が吹いているのだろう。 「それはフラミンゴだったかもしれないし、マウンテンゴリラだったかもしれない。とにかく人...
pale asymmetry | 2025.12.05 Fri 17:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 頬に冷たさを感じて目を開ける。目の前に彼女の顔が合った。両手にグラスを持っている。その一つが僕の頬にくっつけられていた。 「レモンティーをどうぞ」 彼女が笑う。金茶の液体で満たされたグラスを受け取りながら、僕は上半身を起こす。胸の上にあった文庫本がソファーで一旦跳ねてから床に落ちた。いつの間に眠ってしまったのだろう。西に面したの窓が開け放たれていて、そこから乾いた風が陽光を連れて流れ込んでくる。乾いているのに、その風はとても滑らかに流れ...
pale asymmetry | 2025.12.02 Tue 18:25
JUGEMテーマ:ショート・ショート テレヴィジョンのなかの君が言う。 「まだ何も始まってはいない」 僕は頷き、テレヴィジョンのモニタに答える。 「だから、あらゆる可能性を考察しなければいけないんだ」 すると君は首を振る。 「あなたは『あらゆる』という状態に囚われすぎている。本当に見つめなければいけないのは可能性の方なのに」 僕は思わず首を傾げる。 「でも何も始まっていないのだから、可能性は無数で、無作為の抽出だけでは僕は満足できないよ」 君は微笑む。暖か...
pale asymmetry | 2025.11.21 Fri 10:24
JUGEMテーマ:ショート・ショート 求められているのは言語によるデッサンと身体感覚の拡張、異質なスナップショットなのだという。 前提1 湖を取り囲む暗く陰った稜線。這うように低いその稜線は、疲れて横たわる架空の獣のように見える。たとえばそれは龍のような。その獣は一日中、躍起になって太陽を喰らおうとしていたのかもしれない。そのせいで疲れ果て、今は凪の湖面に寄り添うように臥している。沈み行く太陽はそれを嘲笑うかのように金色の輝きを盛大に放ち、鮮やかな黄金の影を湖面...
pale asymmetry | 2025.11.16 Sun 20:42
JUGEMテーマ:ショート・ショート 玄関の扉を開けると、早朝の空気は橙色をしていた。風は強く、その橙が気流に巻き取られて流れていく。生温い風だった。 「私たちは南側にいるの?」 君が少しはしゃいだ声で聞く。 「そうだね。前線はここより北側に位置しているようだ」 僕は北の空を見つめる。遠くに青の欠片が斑に見える。あの辺りに境界があるのだろうか。もちろんその詳細は解らない。今朝の天気図をイメージして、この場所の空に重ねてみても、それでもよく解らない。 「台風はもう近づ...
pale asymmetry | 2025.11.12 Wed 18:01
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「月が綺麗だね」 隣のあなたがそう言ったので、私は少しドキドキしてしまった。そっとあなたを見ると、あなたは真っ直ぐに月を見上げていて、だからあなたは漱石を知らないのだと思った。 「空気が、冷ややかに沈んでいるからかな」 呟きは私に向けられたものではないようだったから、私は肯定も否定もしなかった。ただ温かなワインを口に運び、その甘みと渋みを流し込んで気分を落ち着けたりしていた。夜が長くなったから、ベランダで並んでワインを飲むことが多くな...
pale asymmetry | 2025.11.02 Sun 17:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 数分前まで強い雨が斜めに降っていたのに、今は晴れ間が見えている。でもその陽光は頼りなく、どこか病的な印象を受けた。僕らは丘の上のレストランで、窓際の席に並んで腰掛け、そんな窓外の風景を眺めていた。窓の外の庭には大きな魚が設置されている。まん丸い躰に小さな鰭の魚。カラフルな体色と模様で、たぶん熱帯魚を模したものなのだろうと思われた。その向こう側の、遠くに海を見下ろすことができる。さっきまでの雨の滴を纏った魚は、海までの長い距離に憤っているように...
pale asymmetry | 2025.10.29 Wed 18:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート たっぷりと濡らしたタオルで、彼女の足先を拭う。小さな傷が刻まれた足先からは、血が滲んで流れ落ちる。 「こうやって、全ての血液が流れ出してしまうのかしら?」 彼女の呟きが、薄暗い部屋を控えめに跳ね回る。それは無邪気な子猫のような気配で僕を擽る。 「傷は小さいから、全ての血液が失われる前に止まるよ」 僕がそう言うと、彼女はとても意外そうな表情をする。僕は器の中で温くなった液体をシンクに流し、また冷水を器に注ぐ。それは星雲を連想させる図...
pale asymmetry | 2025.10.23 Thu 18:02
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