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JUGEMテーマ:ショート・ショート 猫と眠る。夢を見ずに眠る。そういうものが邪魔に感じるくらい、深く眠りに沈みたかったのだ。きっと猫もそう思っている。私の胸元で、行儀良く丸まって目を閉じたから。けれど目が覚めたら、猫は胸元にいなかった。背中に温かさを感じて目をやる。猫は私の背中に自身の背中をくっつけて眠っている。四肢を思いっきり投げ出して、尻尾はやわらかい曲線を纏っている。じっと見つめていると、猫が目を開く。 「ごめん、僕は夢を見たかったんだ」 そっと伸ばした私の手の甲を...
pale asymmetry | 2025.06.03 Tue 18:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 水の張られていないプールサイドに、私たちは腰掛けていた。プールの中に足を投げ出して揺らしながら、あるはずのない水を掻き混ぜていた。それはきっと美しい水で、だから私たちの足先も美しく変化しているはずだと思えた。でも私たちの足先はひどく穢れていたので、それが完全に美しいものになるには、永遠に近い時間が必要なようにも思われた。ここは十数年前に廃校になっているから誰もいない。深夜なら肝試しに来る者もいたけれど、こんな陽光の鋭すぎる正午あたりにやって来...
pale asymmetry | 2025.05.31 Sat 17:31
JUGEMテーマ:ショート・ショート そう言えば、傘を開いていない。私はそのことに気づいて立ち止まる。両手を見て、どちらの手にも傘が握られていないことを確認する。つまり何処かに傘を忘れてきてしまったということだろうか。よく考えを巡らせてみる。家を出るときには傘を手にしていただろうか。それもよく憶えていない。傘を持ってでかけなければ。そう考えたことは憶えている。けれどその後玄関で傘を手にしたかどうかは、定かではない。というのも、出かけるときには雨は降っていなかったのだ。玄関の扉に鍵...
pale asymmetry | 2025.05.28 Wed 18:03
JUGEMテーマ:ショート・ショート 確かこの辺りだったはずだと、路地を何度も行き来して探す。探しているのは書店だった。三ヶ月前ほどに偶然見つけた書店で、落ち着いた空気に満ちている店内は、じっくりと本を探すことが出来た。そしてもちろん、私好みの本がたくさん並んでいたのだ。ただそのとき手持ちの現金がなくて、現金精算のみの店だったので、何も買うことなく店をあとにしたのだった。もちろん数日後にもう一度訪れるつもりだったのだけれど、上手く都合がつかず、気がつけば三ヶ月も経過していたのだっ...
pale asymmetry | 2025.05.15 Thu 18:19
JUGEMテーマ:ショート・ショート あの人は今日は傘はいらないよと言ったけれど、私は傘を手に家を出た。夜半の激しい雷雨に対する怖れが、まだ私のなかに分厚くこびりついていたから。 「君はきっと遠くまで行ける人だね」 あの人はどこか呪文のように囁いた。その意味がよく解らなかったから、私は曖昧に笑って扉を閉じた。いいえ、よく解らなかったわけではない。その意味を考えることが面倒臭かったのだ。それに私はすでに今日の仕事の内容に囚われていて、それ以外のことに気を配ることが出来なかった...
pale asymmetry | 2025.05.06 Tue 18:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 真夜中に目が覚める。嘘、本当に真夜中なのかは知らない。でも部屋の闇は真夜中の装いだったから、真夜中でなかったとしてもその近辺だと思えた。全身に、結構な汗をかいている。少し気持ちが悪かったので着替えようかと半身を起こす。そのとき、布団の脇に佇んでいるロリータと目が合った。いや嘘。目は合っていない。そのロリータは顔の部分が花だったから。だから目はなかったのだ。もちろん口も鼻も耳も見当たらなかった。淡いピンクのアマリリスが顔だったのだった。だからア...
pale asymmetry | 2025.05.03 Sat 20:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート まだ朝と呼ぶには暗すぎる時刻に、あなたはモゾモゾと動き出す。 「シグナルを放たなければいけない」 私の左の頬に指先を真っ直ぐに沈めながら、あなたはそう囁いた。部屋の照明を灯すと、あなたはとても真面目な表情をしていたので、私は堪えきれずに笑ってしまった。 「今すぐに準備しなければ、シグナルを放つために」 あなたは手早く着替えを澄ませ、大きなリュックを引き摺りながらキッチンの方へと歩いていく。私はのそのそとベッドから抜け出し、幽霊のよ...
pale asymmetry | 2025.04.17 Thu 18:11
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「まことに水は不可思議な翻りそのものなのですよ」 老人はそう言うと、何故かはにかむ笑みを浮かべた。夕日は背後で沈んでいるので、その茜と黄金は煌めきの欠片だけしか見えなかった。 「その不変性は、普遍性へと繋がっていくのです」 僕と老人は川原に腰を下ろしていた。傍らの小石を拾い、老人が川面に投げる。水面に飲み込まれた小石が去り際に放った波紋が、夕日の欠片を踊らせる。 「特に地下に染み込んだ水は、一度闇を取り込んでいますからね」 老人...
pale asymmetry | 2025.04.08 Tue 17:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 正午の時報を合図にして、雨が降り出した。お昼前の天気予報をラジオで聞いていて、そのあとの時報とぴったり重なるように雨が降り出したのだった。空腹の雨だな。意味もなく思った。むしろ雨によって過食が象徴されているような気もしたけれど、きっと僕自身のお腹が減っていたからそう思ってしまったのだろう。面倒臭いけれど何か食べなければ、なんて考えていると玄関の扉が賑やかに開く音が聞こえてきた。 「雨だよ」 甥っ子の声だった。玄関まで行くと、レイコート姿...
pale asymmetry | 2025.03.27 Thu 20:22
JUGEMテーマ:ショート・ショート 私は夜の住人ではない。正確には、今はそうではない。もっと正確に言えば、かつてもそうではなかった。ただ私が夜の住人だと思い込んでいただけだ。そしてその思い込みも失われ、あらゆる意味で私は夜の住人ではない。だから私は夜の懐を知らない。そこに懐柔されたこともない。陽光を浴び、風に吹かれ、雲の流れを追いかける暮らしが、私の属する世界だ。 重い荷物を転がして、あなたははしゃぐ。街灯はか弱く夜は闇に喰らわれている。何か大切なものが蹂躙されているよ...
pale asymmetry | 2025.03.20 Thu 18:17
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