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JUGEMテーマ:ショート・ショート 「人形はパイナップルが嫌いなの。温かいパイナップルが」 「温かいパイナップル?」 「中華料理に入っているようなやつ」 「ああ、あれね」 「あなたは、好きだよね?」 「うん、そうだね。君は嫌いだよね?」 「そうね。嫌いと言うより苦手なの」 「嫌いと苦手は違う?」 「違うよ」 「どんな風に?」 「存在を否定するかしないか」 「例えば?」 「あなたが温かいパイナップルを食べていても、私は不快じゃない。その存在に対して嫌悪するこ...
pale asymmetry | 2026.08.17 Mon 18:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート 天気予報は雨だったけれど、僕らは真上からの陽光を浴びている。真夏の光。青を内部に閉じ込めた銀色の光だ。でも風景の輪郭には黒雲が見える。その下では雨が降っているだろう。だから天気予報はあの辺りのことを言っていたのだろう。一勝一敗って感じだと思えた。誰が勝者で誰が敗者なのかはよく解らないけれど。 「虹が見えても良いのにな」 友達が唐突に呟く。 「虹?」 僕は頭だけを持ち上げて友達に向ける。友達も頭だけを持ち上げて頷く。 「雨を横から...
pale asymmetry | 2026.08.11 Tue 18:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 海辺のパーキングに車を止める。この場所には久しぶりに来たような気がする。突き出た半島の途中にあるこのパーキングからは、半島の根元の街が、遠くに見える。今その街は濡れている。もちろんこのパーキングのアスファルト路面も濡れている。雨は決して強くはなく、降雨は断続的だったから、雨に支配されている感じはしない。風はまだ強く、だから弱い雨でも斜めの勢いを有して流れている。そして彼女は半島の先端方向に目を向けている。去っていく嵐はその視線の先にあるはずだ...
pale asymmetry | 2026.08.09 Sun 18:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 雨の粒は小さく、その落下の速度はか弱く感じた。真っ直ぐに見上げた空は銀色で、青が飲み込まれたその色は真夏の空の色だ。つまり陽光が強引に降り注いでいて、その雨粒が何処から運ばれてきたのかはよく解らなかった。立ち上がる雲はいくつもあるし、その内の一部が少し灰色味を帯びていたから、その辺りの内部に雨の起因があるのかもしれない。何にしても風景の全てを塗りつぶせるほどの雨ではなかったから、僕らは岸壁でのんびりと腰掛けていた。もちろん傘は差していない。少...
pale asymmetry | 2026.08.03 Mon 18:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート スコールに足止めされる。こういう日に限って傘を持ってこなかった。仕方がないので雨宿りしながら晴れ間がやって来るのを待つ。こういう何もない時間は嫌いじゃない。ラベリングできない時間は自由な時間だ。ただ風景を真っ直ぐに見つめて、如何様にも空想を羽ばたかせることが出来るから。もちろん上手く羽ばたかなかったとしても、それはそれでただフラットなリズムを愉しむことが出来る。そういうのも嫌いじゃない。 でも今日は雨を見て、私は黒い犬を思い出す。四年前ま...
pale asymmetry | 2026.07.28 Tue 18:38
JUGEMテーマ:ショート・ショート しかめっ面で少女は踊る。右往左往するような振り付けで。たぶんそれは少女の気持ちを表していない。だから少女は気分を害している。でも気分を害している少女の気持ちは右往左往しているから、結果としてその振り付けは今この瞬間の少女にシンクロしている。そんなことを考えながら、私はアクリル越しに少女を見つめていた。 「でも、あなたは少女に触れることは出来ない」 彼女がそう指摘して、何処か寂しげに笑う。寂しいのか、愉しいのか、寂しい自分を愉しんでいるの...
pale asymmetry | 2026.07.18 Sat 18:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「侵食されてそれで終わり」 彼女がポツリと零す。少し涼しげな風が彼女の長い髪を弄ぶ。そうやって彼女の輪郭を風景の隙間に埋めようとしているようだ。そのまま掠われそうな気がして、僕は彼女の肩先に触れる。指先でその曲線をなぞり、風景からちゃんと浮き上がっていることを確認する。彼女は擽ったそうな表情をして、空の奥の方を見つめている。 「でも、抗うことは出来ると思う」 僕がそう言うと、彼女は曖昧に頷く。同意しているのか、同意している風に装ってい...
pale asymmetry | 2026.07.13 Mon 17:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「きっとその人には機微が解らないのでしょう」 口をもぐもぐさせながら彼女が言う。僕らは縁側に並んで座り、冷たいうどんを啜っている。汁にはたっぷりのショウガと少しのワサビを入れて、麺にはミョウガを絡ませている。少しやりすぎのような気もしたけれど、暑熱を紛らわすためには、仕方のないことだった。 「機微?」 「そう。そういうのに疎い人は少なからずいて、けれど機微に疎いからといって感受性が鈍いわけではないから、そういう分野を漂ってたりする。そう...
pale asymmetry | 2026.07.02 Thu 18:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 毎日毎日暗号を構築してあなたは愉しいの? と君が訊くから、僕はもちろんと答えながら、そうか僕は暗号を構築しているんだと気づく。遠い海の向こうで二十二年ぶりの歓喜が叫ばれているのだというニュースを受け取りながら、僕はなんて遠いところにいるのだろうとふと思ったりしている。ステップは一歩踏み出されたようだけれど、消えない混乱が確かに渦を巻いていることは否めない。それはとても小さな渦で、だから気にする必要などないのかもしれないけれど、それでも感じてし...
pale asymmetry | 2026.06.29 Mon 15:37
JUGEMテーマ:ショート・ショート 静かな部屋で、きみは静かに眠っている。息をしていないようだ。耳を澄ましてもエアコンディショナーの稼働音しか聞こえない。カーテンの向こうでは強い午後の日差しが渦を巻いているけれど、この部屋はきみのために完璧に制御されていて、きみの眠りを妨げる要素は何もない。あるいは僕だけがその要素、危険分子かもしれない。 きみの胸は微かに、そしてゆるやかに上下している。まだこの世界に繋ぎ止められている証拠だ。けれど半ば以上、きみはこの世界から離脱しているよ...
pale asymmetry | 2026.06.23 Tue 19:48
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