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JUGEMテーマ:ショート・ショート 「時間って、本当に流れていると思う?」 あなたが真剣な表情で訊くから、私は少し身構える。 「時間って流れるものなの?」 思わず私は問い返していた。 「流れる以外にある?」 あなたが少し戸惑うように訊く。 「例えば積み重なるとか、あるいは織り上げるとか」 「時間が積み重なる……。時間を織り上げる……」 あなたは遠い眼差しで、私の言葉を繰り返し、何度か首を傾げる。 「確かに。でもやっぱり流れるが一番...
pale asymmetry | 2026.09.11 Fri 18:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それはあなたの感受性が働いているからでしょう?」 あなたはそう言いながら、私の前髪を弄ぶ。風よりも上手に、日差しよりもしっかりと。 「幾つもの儀式を纏ってきたから、そのような感受性が備わったのでしょうね」 前髪を弄んでいた指先は、いつの間にかつむじの辺りを撫ぜている。その渦の奥底にある真理を摘まみ取ろうとしているかのように。 「でもどんな儀式にだって、遊びが備わっている。だから儀式は常に変化の余地を有している」 あなたは遠くを...
pale asymmetry | 2026.09.10 Thu 18:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「傘を持ってきたのに、雨の気配もない」 少女は空を睨んで嘆く。確かに空は銀色で、夏の勢いを抱えたままだ。銀色の向こうに、次の季節の青が待機しているのかも知れないけれど、地上を這い回る僕らからはそれを確認することは出来ない。 「こんな嵐は間違ってる」 青年は喉を鳴らしてソーダ水を飲んだ後、長閑な口調で言う。本当に間違っていると思っているのか、それとも間違っているという想いを愉しんでいるのか、そんな曖昧な表情で。 「まあ、世界は間違いだ...
pale asymmetry | 2026.09.04 Fri 18:37
JUGEMテーマ:ショート・ショート 誰かは眠りにつこうとしているだろう。別の誰かは目覚めようとしているだろう。僕はあわいを滑っている。君は飛び立とうとしているかもしれない。あるいは空港の片隅で、僕と同じように雨滴を眺めているかも知れない。でも君はちゃんと地に足を着けて、重力をある程度操っているだろう。僕の方は重い車を走らせているにもかかわらず、この夜と朝のあわいを滑っているとしか思えない。風が少し強まっているから、君はそのことを危惧しているかも知れない。でもこれ以上に強くなる気...
pale asymmetry | 2026.09.03 Thu 08:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「みそらの色をのせると良いよ」 僕の画用紙を覗き込んで、少女はそう言って得意げに笑う。 「みそらの色ってどんな色?」 僕が尋ねると、少女は空を指差す。 「晴れた空の色」 その声に導かれて、僕は空を見上げる。輪郭の僅かな部分にだけ雲を抱えた空は、夏の陽光のせいで銀色に発光している。空全体がそんな感じだったから、眩しすぎて色は良く解らなかった。 「晴れ過ぎていて、よく見えないよ」 僕がそう言うと、少女も空を見つめて目を細める。...
pale asymmetry | 2026.08.31 Mon 18:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「カボチャからカボチャの馬車を連想するのは安易だと思う」 彼女はきっぱりと言い切る。 「じゃあ、何を連想するの?」 私が尋ねると、彼女は僅かに肩を竦めた。 「例えば、カボチャのUFOとか」 そう言った後、彼女は何故かはにかむように笑った。 「UFOは面白いと思うけれど、それは何処まで運んでくれるんだろう?」 「たぶん宇宙の中心まで。あるいは遙かな未来まで」 「過去には行けない?」 「過去は駄目。もうそれはとっくに失われているか...
pale asymmetry | 2026.08.28 Fri 18:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「朝の色って何色だと思う?」 彼女が唐突に訊いてくる。僕らは縁側に並んで腰掛けて、レモンティーを飲んでいる。縁側に面した庭は、今まさに朝の色に染まろうとしている。僕らはときどき早起きして、そういう庭を眺めて過ごしたりしている。 「朝の何の色? 光の色? 空気の色? 庭の色?」 僕が聞き返すと、彼女は首を傾げ少しの間黙り込む。 「朝全体の色……かな?」 自分自身に問い掛けるように、彼女はぽつりと答える。僕はレモンティー...
pale asymmetry | 2026.08.22 Sat 11:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「人形はパイナップルが嫌いなの。温かいパイナップルが」 「温かいパイナップル?」 「中華料理に入っているようなやつ」 「ああ、あれね」 「あなたは、好きだよね?」 「うん、そうだね。君は嫌いだよね?」 「そうね。嫌いと言うより苦手なの」 「嫌いと苦手は違う?」 「違うよ」 「どんな風に?」 「存在を否定するかしないか」 「例えば?」 「あなたが温かいパイナップルを食べていても、私は不快じゃない。その存在に対して嫌悪するこ...
pale asymmetry | 2026.08.17 Mon 18:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート 天気予報は雨だったけれど、僕らは真上からの陽光を浴びている。真夏の光。青を内部に閉じ込めた銀色の光だ。でも風景の輪郭には黒雲が見える。その下では雨が降っているだろう。だから天気予報はあの辺りのことを言っていたのだろう。一勝一敗って感じだと思えた。誰が勝者で誰が敗者なのかはよく解らないけれど。 「虹が見えても良いのにな」 友達が唐突に呟く。 「虹?」 僕は頭だけを持ち上げて友達に向ける。友達も頭だけを持ち上げて頷く。 「雨を横から...
pale asymmetry | 2026.08.11 Tue 18:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 海辺のパーキングに車を止める。この場所には久しぶりに来たような気がする。突き出た半島の途中にあるこのパーキングからは、半島の根元の街が、遠くに見える。今その街は濡れている。もちろんこのパーキングのアスファルト路面も濡れている。雨は決して強くはなく、降雨は断続的だったから、雨に支配されている感じはしない。風はまだ強く、だから弱い雨でも斜めの勢いを有して流れている。そして彼女は半島の先端方向に目を向けている。去っていく嵐はその視線の先にあるはずだ...
pale asymmetry | 2026.08.09 Sun 18:02
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