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波の回廊 68

    「ご結婚はいつごろの予定ですか?」 金村が突如として訊いた。信子は焦ってしまった。 「なにいってんの。――ごめんなさい。この人、なにをいい出すのか」 信子は金村を制して首を横に振った。すると、佑子がいった。 「一樹さん、転勤になってしまったの」 「えっ、どこへ」 「釧路のほう」 「いつから?」 「この四月から」 山宮は四月一日付で釧路管内の白糠という町へ異動になったのだ。 人口が八千人ほどの小さな田舎町で、昔は炭鉱と漁業で賑わったが、今はシシャモの水揚...

 at dawn | 2018.04.02 Mon 09:12

ガラスの靴はラメ入りだった

  ちいさな頃 リカちゃん人形の頭の地肌の点々がどうしてもきらいでほとんど遊ばなかった   リカちゃんやジェニーちゃんの靴を脱がせてシルバニアファミリーのうさぎに履かせようとした     みみぴ( = ・ ω ・ = )                          

惑星フルーツ | 2018.04.02 Mon 08:24

波の回廊 67

    信子たち三人は、話をしながら金村を待っているが、いやに金村の帰りが遅い。電話があってから一時間ちかくにもなるのだ。 信子が金村に電話してみようと思ったとき、チャイムがなって金村が帰ってきた。 ドアをあけて、信子は思わず声をあげた。 「どうしたの、その格好!?」 紺のジャケットにうすいピンクのシャツ。白いパンツにベージュの靴。グレー一色の作業着男が、ちょい悪オヤジに変身していた。まだ春なのに、夏の先取りのような格好だ。 仕事が終わったらこれに着替えて来てねと、出...

 at dawn | 2018.04.01 Sun 09:06

詩『病床異夢:Sleeping In The Sickbed With Different Dreams』

SAに

with a kiss, passing the key | 2018.04.01 Sun 00:00

波の回廊 66

    プロダクションの寮で暮らしていた佑子は、その後二度も住まいをかえた。 ストーカーに狙われただけでなく、脅迫の手紙や不気味な荷物がマンションの管理人に届いたり、尊敬していたテレビ局のプロデューサーから食事のあとでホテルの部屋に連れ込まれそうになったりと、勉強どころではなかったが、それでも佑子は頑張って高校を卒業した。 エレベーター式の学園は、大学の文学部を推薦したが、裕福な子弟が多い独特な雰囲気に違和感を感じていた佑子は、英語が得意なせいもあって国際キリスト教大学に入...

 at dawn | 2018.03.31 Sat 08:43

波の回廊 65

    風がでてきて、信子の髪がなびいた。 「帰ろうか?」 金村がいうと、信子は黙って頷いた。 少し歩いて、信子は金村の後ろから声をかけた。 「髪が白くなったね」 体型は変わらないが、明らかに金村の白髪(しらが)は増えている。 「誰だって、六十すぎりゃ白くなるさ」 坂をくだりながら金村がいった。 駐車場の車に戻り、信子は助手席のシートベルトをしめた。 「あの地震から、すべてが変わってしまったわ。……ねっ?」 信子は金村の横顔を見ていった。 「昨日の...

 at dawn | 2018.03.30 Fri 09:09

波の回廊 64

    「ちょっと待って」 信子は食卓を離れた。佑子が遊びに来て一緒に昼食を食べているのだ。 「それで?」 「幸一は日本に帰っているぞ」 「えっ!?」 つい、大きな声が出てしまった。慌てて佑子を見るとこっちに視線を向けている。あなたに関係ないのよと手を振って、信子は佑子に背を向けた。 「それ、どういうこと?」 「とにかく、こっちにはいないようだ。大家(おおや)にも会ったし、学校にも行ってきた。英語がよくわからんので苦労したけどな」 金村は次のように話した。  ...

 at dawn | 2018.03.29 Thu 09:01

波の回廊 62

    信子は思いつくままに佑子のマネージャーに電話した。 幸一に電話してくれと頼んで番号を教えると、ものの五分もしないうちに返事がきた。さすが女子大を出ている女は違う。 「あのう、頂いた番号に間違いはないですか?」 マネージャーの松島が、申し訳なさそうな声を出した。 「二回かけてみたんですが、どうも違うようです」 信子は驚いて手帳の番号を確認してみるが間違いはない。しかし、その番号が違うというのだ。 松島は相手にその番号を昔から使っているかどうか尋ねてみたが、プラ...

 at dawn | 2018.03.27 Tue 09:08

波の回廊 61

    権蔵は、世の中のカネ持ちや一流とよばれる会社に良い印象を持っていない。 ため息がでるような大金は、悪いことでもしなければ、そうそう得られるものではないと思っているからだ。 もちろん、よほどの運に恵まれた場合は別だが、商売でいえば、たいていは安いものを庶民に高く売りつけて成り上がる。社会の構造がわかっていないといわれそうだが、良心的な商人であれば、大儲けとまではいかないのではないか。 高い利息でカネを貸し、悪代官のように情け容赦なく取り立てた高利貸しが、カネが溜まる...

 at dawn | 2018.03.26 Mon 09:39

波の回廊 60

    「ま、それはそうですね」 といって相手を安心させたあとで、権蔵は当時の営業部長がまだ在職中かどうか訊いてみた。 「退職されました」 「ほう。その方はなんというお名前ですか?」 男は返答に躊躇した。 「イヤなら仰らなくて結構です。調べる手はいくらでもありますから」 「……高山部長です」 「下のお名前は?」 「高山昭二です」 「江差町の方ですか」 「それはちょっと……」 男はまた言葉を濁した。 「ところで、支払いに関してですが、...

 at dawn | 2018.03.25 Sun 09:37

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