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JUNE/BL/ML

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JUNE/BL/MLなど言われる、男×男などの同性愛要素を含む創作小説テーマです。
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水のない川 12

 「慎一くん。…怒ってる?」  都心の閑静な住宅街の中にあるそば屋で、天ざるを食べる慎一を伺いながら、高嶋がおずおずと訊く。  お昼ご飯は何がいいかと訊かれて、「そば」と答えたら連れてこられた。  朝から口数の少ない慎一に、びびってるらしい。  バスで最寄りの下界の町まで降りたら、そこから電車を乗り継いでお茶の先生の教室へ向かうのがいつもの交通手段だが、今日は町のバス停まで高嶋が迎えに来て、教室まで送ってくれた。  学校まで迎えに行くというのは断固として固辞した。離れたところで待ち合...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.19 Wed 10:21

水のない川 11

   「馨、夜眠れてる?」  顔色が悪いのが気になって、慎一はお稽古が終わってから馨に声を掛ける。  居眠りはいつものことだけど、お稽古中にうとうとしたのは初めて見た。  3年生になって慎一が部長になって、厳しい先輩はいなくなったし気が緩んでるせいもあるだろう。忙しい生徒会の仕事の合間を縫って部活にきてる馨だから、叱りたくはないけど。   「あ、…ごめんね、慎一。お稽古中に」  馨が申し訳なさそうに、首を竦める。  慎一は、怒ってるんじゃないよと、笑顔で言った。  「…誰かに、何...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.18 Tue 09:26

水のない川 10

 思ったより遅くなってしまった。  もう吉見は来ているだろうか――。慎一は急いで芭蕉庵に向かう。  ひと気のない露地へ続く木戸の前に、吉見は立っていた。  「吉見先輩! ごめんなさい、お待たせして」  部室とお茶室の鍵は、慎一が持っている。吉見は、木戸を開けて部室の方へ行こうとする慎一の腕を掴んだ。  「いや、ここでいいよ。すぐに済むから」  今日は天気も良くて、暖かい。此処には誰もいないから、外で構わないよと、吉見は待合の方へ慎一を促す。  屋根のある待合に、二人は並んで腰を掛けた。数寄屋...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.17 Mon 09:06

水のない川 9

 試験が終わると、また高嶋のデートしよう攻撃が始まったけれど、結局休みが合わずに、まだあれから会ってはいない。  今夜はまだ、おやすみのメッセージは届かない。       (声が、聴きたいな――)     高嶋からメッセージが届いても、慎一はすぐには開かない。そんなにまめにはチェックしないタイプなんだな、と思われるくらいの頻度で開き、最低限の返事を返す。    もともと、慎一はあまりラインに噛り付いているタイプではなかった。  だけど高嶋からメッセージが届くようになって、スマホは肌...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.16 Sun 18:55

水のない川 8

   2月も半ばに入った冬らしい日、慎一はひと気のない芭蕉庵に呼び出された。  「失礼します」  今は中間考査の期間中だった。  試験が終わった午後、慎一が部室の木戸を開けると、中の障子は開けられていて、部長の吉見が中で待っていた。  「いらっしゃい。悪いね、試験中に呼び出して」  「いえ、僕は大丈夫ですでけど」  3年生はもう授業もほとんどなくて、自由登校になっていた。  学院の生徒のほとんどは内部進学でそのまま聖ステファノ大学に進むが、外部受験をする生徒も何割かいる。  国立の二次試験を間...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.15 Sat 00:16

水のない川 7

 休憩の後またしばらく滑って、慎一は転ばずに一人で滑れるようになった。  後半、高嶋が後ろ向きに慎一の手を引いて滑ってくれたのを見て、それやりたいと云ったら、また今度とやんわり止められたけど。  屋外のスケートリンクはやっぱり寒いし、疲れてくると怪我をしやすくなるからと、二人は混み合ってきたお昼頃にスケートリンクを出た。  「お昼ごはん、少し遅くなっちゃいそうだね。大丈夫?」  街中に向かって車を走らせながら、高嶋が訊いてくる。  「アイス食べたりしたから、そんなにお腹すいてないよ」  「...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.14 Fri 08:59

水のない川 6

 「あれ、慎一出掛けるの?」  冬休み明けの土曜日、寮のエントランスを出たところで、慎一は馨たち生徒会の連中とばったり 会ってしまった。  「うん。馨たちは生徒会の仕事?」  「仕事ってほどじゃないけど、そろそろ卒業式とか謝恩会のことでね。まぁ、まだミーティングと云う名のおしゃべり会だよ。この時間、バスあんまりないよね…。お迎え?」  「そう。冬休みはずっと京都だったからね。この週末はおじい様のところへも顔を出しておかないと」  東京に住む母方の祖父、九条のおじい様のところへ行くとき...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.13 Thu 09:24

隣に住むひと 30

  湊斗は、白い物の多くなった頭を、そっとアディの肩に凭れかけた。 「とんでもない親バカだけど……でも、アディがいてくれて良かった」 「失礼な。親バカなんかんじゃないぞ。私は、正真正銘湊斗を愛している。自分の子供に欲情する親はいないだろう?」 「……そ、そうか……」  返事に困っていると、アディはそっと湊斗の皺の刻まれた手を持ち上げた。 「美しい手だ。この皺のひとつひとつが私と共に刻まれたと思うと、堪らなく愛おしい」  そうしてアディは、湊斗の手の甲...

真昼の月 | 2020.02.13 Thu 08:09

水のない川 5

 「おばあちゃん、表の窓ふき終わったで。あとどこ拭いたらええん?」  慎一は雑巾をつけたバケツを持って、台所にいる祖母に声を掛ける。  「あとはお風呂とはばかりさんの窓だけや。朝からようおきばりやしたなぁ。ほっこりしたやろ? 今日はもう終いにして、ゆっくりしとき」  昆布巻きの準備をしながら祖母が言った。黒豆を炊く甘い匂いが漂ってくる。うちはお醤油を入れて炊くから、ほんのりみたらし団子みたいな香ばしい匂いもする。  「そんだけやったら、もう今やってしもとくわ」  トイレと風呂の窓なら小さい...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.12 Wed 09:52

隣に住むひと 31 (完)

 ◇◇◇ ◇◇◇  ぽかりと目が開くと、煌々と、明るい空間にいた。  ここはどこだろう。眩しすぎて、目が痛い。 「まだ眩しいか?そのうち馴れる。大丈夫だ」  声の方を見る。大きなひとの姿が見えた。綺麗な顔。宇宙のような、藍色の瞳。長く伸びた銀藍の髪。すっきりと伸びた、一本角。  初めて見るひとなのに、ずいぶんと懐かしい気がした。 「おはよう。やっと目覚めたね。ずっと待っていたんだよ」  悪魔はそっと、優しく手を伸ばして、小さな小さな子供の形をしたものを手のひらに載せた。  それは暖かく...

真昼の月 | 2020.02.12 Wed 08:04

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