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お前には寂しい思いをさせた?そんな事、思ったこともないくせに。もしも少しでもそう思ったことがあるのなら、俺に何か言葉をかけてくれたことがあっても良いはずだ。 でも、湊斗は父親の姿すら、見たこともなかった。 それは夏休みでも正月でも同じ事で、父親は家にいても書斎から出てくることはなく、湊斗がいても挨拶を返したことすらないのだ。 リタイアしてやることがなくなったから、俺の仕事について根掘り葉掘り聞いて、仕事をしている気にでもなりたいのだろうか。部外者に内部情報を漏らすような真似をする...
真昼の月 | 2020.02.10 Mon 08:02
「馨はこっち」 慎一は、針を持とうとしていた馨に、鋏とマチ針で留めた布を渡す。 「マチは1センチくらい、で、ここのカーブのところは5ミリ間隔くらいで切り目を入れるんだ。こんなふうにね」 見本に切った奴を見せながら説明した。 馨は難しい顏で聞いている。見本の切り目を見ながら、ぱちぱちと瞬きしながら訊く。長くてくるんと上がった睫が揺れた。 「これ、このラインぎりぎりまで切れ目入れるの?」 「そう。その方がカーブとか丸みが綺麗に出るんだ。布がもたつかないから」 「うーん。わかった」 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.09 Sun 20:19
……こんな時間に電話をかけてくるなんて。自分が子供の頃は、仕事中に電話をすればあからさまに罵られたのに……。 それでも、後の面倒さを考えて、湊斗は電話に出る事にした。年も年だし、緊急連絡でもいけない。 「はい、もしもし。……どうしました?」 それは、父からの電話だった。母から電話がかかってくることはたまにあるが、父からの電話は珍しい。 『ああ、湊斗か。実はな。仕事を引退することにしたんだよ』 いきなり何の前置きもなくそんな話をしだす父に、湊は...
真昼の月 | 2020.02.09 Sun 08:01
「お人形さんがいるな」 窓の外をぼんやり眺めていた高嶋 幸成が、ちょっと驚いたように楽しそうな声音で呟いた。 仕事に身が入らない社長の代わりに、この学院の生徒会長、渕上 崇成と、9月末に行われる学院祭でのイベントの件で打ち合わせをしていた近藤 充希が、 「は?」 と振り返る。 「――ああ、二年生の綺麗どころですね。あの二人、仲が良いから。よく一緒にいますよ」 渕上が、窓の外に目を遣って答える。 「よそ見してないで、ちゃんと仕事しろよ。このボンクラ社長が」 近藤...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.02.08 Sat 22:46
◇◇◇ ◇◇◇ 都内の一等地。冬の空は青く澄んでいて、気持ちの良い日だ。ビルの高層階にあるオフィスからの眺めは抜群だが、残念ながら、それも毎日見ていればただの風景に成り果ててしまう。 湊斗はチラリと窓から外を見て、それから壁に掛けられた時計に目を移した。 「ああ、もうこんな時間か。それじゃあ、この続きは昼休みが終わってからだね」 暖かな日差しが窓から射し込むお昼時。ちょうど持ってこられた書類が一段落したから、湊斗……いや、橘営業一課長が席を立つ。 昔、アディが「かっこ...
真昼の月 | 2020.02.08 Sat 08:06
「結果として彼らが人間界からいなくなるから、人間界側から見ると、悪魔に連れてかれて、そのまま食べられてるんじゃないかと思われる……んじゃないのかな?」 何でも無いことのように────確かに、アディには当たり前のこと過ぎる話なのだろうが────淡々と話すアディの話を聞きながら、しかし湊斗の眉間には段々皺が刻まれていった。 そう。ここで湊斗には、切実な問題が出てきたのだ。 「……それじゃあ、悪魔は魂を食べないのか……?」 「それはどうだろう」 湊斗の切羽...
真昼の月 | 2020.02.07 Fri 08:06
「うわ、生姜焼きじゃないか!今日の昼、本当は生姜焼きの気分だったんだよ!」 「昼は何を食べたんだ?」 「ランチミーティングで仕出しの弁当だった。なんていうんだっけ……松花堂弁当?」 「そうか。それならちょうど良かった」 そんな事を言ってうんうんと頷いているが、本当は俺が何を食べているのか、知っているんじゃないのか?という問いは口からは出さない。アディはいつもいつも湊斗が食べたい物をジャストのタイミングで出してくるが、そのシステムは知らない方が良いのだ。 「そうだ。先方に...
真昼の月 | 2020.02.06 Thu 08:12
◇◇◇ ◇◇◇ 何でアディは俺を食べないのだろう。 そんな疑問を持っていたのは、多分30代の間までだったと思う。40代にもなると、もうなんだかそういうことはどうでも良くなってくるから不思議だ。 「……だとしてもだぞ?若くてピチピチだった俺を毎日迎えに来て、あんたの城で囲ってくれるなら分かるんだよ。若木を愛でるようなもんだろ?でも、俺もうおっさんだぞ」 そう言いながら湊斗がネクタイを抜こうとするのを、アディは「そう急(せ)くな」と止めた。 湊斗の隣の部屋────その住人は...
真昼の月 | 2020.02.05 Wed 08:03
(R-18)です。このblogは18歳未満の方は読んでいらっしゃらないはずですが、苦手な方が間違えて読まないように、一応たたみます。大丈夫おっけーどんとこい!という方だけ「続きを読む」を押すか、もしくは下にスクロールしてお読み下さい。 -----------------------------
真昼の月 | 2020.02.04 Tue 08:43
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真昼の月 | 2020.02.02 Sun 08:07
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