[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
たっぷり遊んだら、次は風呂の時間だ。風呂場はホテルの大浴場のように広く、硫黄の匂いがする温泉を引いているらしい。 「ほら、湊斗、肩まで浸かってよく暖まって」 美しい悪魔は、湊斗の肩が湯から出ないようにいつも見張っている。そうしてたっぷり暖まり、洗い場に上がると、アディは必ず湊斗の体をじっくりと検分した。 「どこにもケガはない?傷は?」 「ないよ。俺、誰にもいじめられてないし、父さんや母さんも俺をぶったりしないよ?」 「いいから、ちゃんと見せて」 不思議なことに、自分の家や学校で服...
真昼の月 | 2020.01.18 Sat 08:05
魔界の公爵なのに、なんで魔界に住んでいないのかと訊いたら、魔界は瘴気が強すぎて、結界を張っても人間の湊斗が立ち入るのには負担が強いからだよ、と説明された。 ここ、魔道界は、魔道士達が住む場所で、清浄すぎる天界と、瘴気の強い魔界の緩衝地帯になっているのだそうだ。 魔道士というのは主に人間界生まれた魔力の高い人間の事をいう。彼らは人間界に『間違えて』生まれてしまった異なる人種と考えて良いのだそうで、魔法が使えることはもちろん、強い魔力とそれに見合った長い寿命を持ち、その分繁殖能力は弱くな...
真昼の月 | 2020.01.17 Fri 08:08
「え?い、いきなり何だよ」 鳩が豆鉄砲を食らうというのは、こういう顔のことを言うのだろうなと、瞬きをすることさえ忘れた様子で俺を凝視してくるその反応に、思わずくすりと笑みが漏れた。 「あ……なんだよ。おまえが言うと冗談に聞こえねえっての。一瞬マジになっちまっただろうが」 俺の笑みをどう都合よく捉えたのか、ハハ…と乾いた笑いを吐き出しながら、先ほど渡したタオルでガシガシと頭を拭き始める。 「また振られたんだろう?」 「あ?」 そして、スーツの上着を脱ぎ始めたコータ...
駄文倉庫 | 2020.01.15 Wed 21:19
皆様、こっそりと新しいお話をアップさせていただきますね💦 皆様にお約束していたお話でも、宿題にさせていただいてるお話でもなく、「結晶シリーズ」でも「ここが世界の〜シリーズ」でもない、全く新しいお話となっております💦 ここのところ、全然違うお話ばかりが降ってきまして、なかなか思っていたお話が書けていないものですから、もうとりあえず、手元にあるお話はblogに上げてしまおう、と思いまして……💦 このお話は、『fujossy』で昨年開催された「完全...
真昼の月 | 2020.01.14 Tue 21:54
コータが最後に俺の部屋を訪れたあの春から、季節はじめじめとした梅雨へと移ろいを見せていた。 小雨程度であれば自転車で通う、自宅と駅の往復路。しかし、今日のように朝から土砂降りであれば、さすがに自転車で通勤するわけにもいかず。 一日の仕事を終え、駅からバスに乗り込み帰路についた俺は、バス停からたった5分の道のりでさえも、差している傘が意味をなさない状況に辟易していた。 そうして、ずぶ濡れになりながら辿り着いたアパート。今や深い緑を纏う桜の樹の下に、大きな黒い傘を差し佇む人影を見つけた。 ...
駄文倉庫 | 2020.01.11 Sat 22:33
久しぶりに直に感じた人肌の温もりは、当然それなりに心地良かった。溜まっていた欲も吐き出し、肉体的な満足は得られた。 「……ったく…」 それなのに、精神的には満たされないジレンマに、そして同時に抱く罪悪感にイライラだけが募っていく。 理由はわかっている。というより、さっきはっきりとわかってしまった。 2時間後に出たホテルの前で、当然今宵限りとお互いに割り切っていた相手と、連絡先を交換することなく別れた。そのことに虚しさを感じることも、罪悪感を感じることも当然ない。 ── ...
駄文倉庫 | 2020.01.09 Thu 22:13
ここ最近の忙しさと、何故か定着してしまった訪問者のせいで、あっちの方はご無沙汰だった。だから可笑しなことを考えてしまうのだと、自らの身に降りかかった不幸を笑い飛ばしてやりたかった。 どちらかと言えば淡泊な方だとはいえ、やはり人間定期的に欲は吐き出さないといけないのだ。そんな妙な実感と焦りの感情を持たされていた。 新学期が始まりひと月が過ぎ、ゴールデンウィークを過ぎた頃には仕事も少し落ち着きを見せ始める。 そんな頃、そういえばここひと月ほどあいつが来ないなということに思いを巡らせ、結局はこう...
駄文倉庫 | 2020.01.06 Mon 23:02
「本気だったんだけどなあ…」 聞き飽きたその言葉。 「毎回言ってるぞ」 「当たり前だろ?俺は、恋愛にはいつも全力投球なんだよ」 ニッと笑いながら堂々と言い放つわりには、こいつの恋愛スパンは短すぎる。 俺と知り合ってからのこの半年の間にだって、月に1、2度。多い時には週に一度、こうして顔を見せるのだ。 何をどう都合よく解釈しているのかは知らないが、初めて会ったあの日に、不本意ながら話し相手になってしまってからというもの、コータは失恋をする度にこの部屋を訪れるようになった。 それも...
駄文倉庫 | 2020.01.04 Sat 23:56
別にコータに言われたからではないが、手早くシャワーを済ませ部屋に戻り、あいつが戻ってくるまでと持ち帰った書類を取り出しかけた俺は、それと同時に聞こえてきた鍵の回される音にまたため息を一つ。 今夜は持ち帰った仕事に手を付けることは諦めようと、手渡された缶ビールを素直に受け取った。 そして、無言のままプルトップを開ける俺の横から、乾杯と缶を差し出してきたコータに形だけ付き合い、やはり無言のままで一口目を煽った。 「毎度のことながら、優しい言葉ひとつかけてくれようとしねえよな」 「毎度のことな...
駄文倉庫 | 2020.01.04 Sat 01:03
築3年。小洒落た真っ白な外観で、バストイレ別の南向き1Kアパート。 駅から徒歩15分かかるとはいえ、この条件で家賃が5万5千円というのは、かなりの好条件だと思う。 私立女子校とはいえ、安月給の高校教師という身分の俺にとっては、十分過ぎるほどの城。 教職に就いて5年目の春、担任を受け持っていた3年生の生徒たちの卒業を経験し、その感傷に浸る暇もなく、翌年度担任を持つクラスの準備に追われていた。 春休みなんてあるものか。生徒たちにとっては嬉しい春休みでも、俺たち教師にとっては毎日のように出勤し...
駄文倉庫 | 2020.01.01 Wed 23:45
全1000件中 461 - 470 件表示 (47/100 ページ)