[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
「まあ、落ち着け」 「落ち着いてられっか!おま……正気?」 「正気だ。心配するな」 「じゃなくて!」 自分に暗示をかけているのか、何度も手にした煙草を口元へと運ぶコータが「落ち着け…落ち着け…」と、何度も呟きを繰り返す。 その姿がまた、滑稽で可笑しくて。 「嫌悪している、という感じではないな」 「嫌悪って……いや、ちょ…待てよ」 嫌悪や侮蔑の感情は読み取れないが、こいつの中の尋常ではない焦りが伝わってくる。俺にとっては、その反応が予想外だった...
駄文倉庫 | 2020.01.22 Wed 22:18
◇◇◇ ◇◇◇ 学校を出てると、湊斗の笑顔は段々と消えていき、どこか怒っているような表情になった。そのまま足早に駅に向かう。多分、駅には彼がいる。早く。早く。 定期券を出して改札を抜け、階段を駆け登る。ホームに出ると、果たしてそこには、スーツを着たアディが立っていた。 「おかえり、湊斗。帰ろうか」 「うん」 湊斗は大きくひとつ息を吸うと、アディの隣に並んで電車を待った。 やがて電車が入線してきて、2人は並んで吊革に掴まった。 暫く、2人は無言だった。駅をひとつ過ぎ、ふたつ...
真昼の月 | 2020.01.22 Wed 08:06
◇◇◇ ◇◇◇ 職員室に入り、担任の隣に座る。去年の担任が少し離れたところからこちらの様子を伺っていた。 「橘、このプリントなんだけどな」 担任はそう言って、三者面談日程希望書を机の上に出した。 希望日には○を、出られない日には×を書くようにと記された希望日欄は、全ての欄に×がついている。 「あのな、橘。お前ももう高2で、来年は受験だ。志望校のこととかもあるし、1度ちゃんとご両親とお話がしたいんだよ」 「でもどの日も仕事があるから来られないって言われました」 「来るのが...
真昼の月 | 2020.01.21 Tue 08:05
◇◇◇ ◇◇◇ 学校に着いて、ランドセルの中身を机に移動させようと蓋を開ける。 そこには、きちんと畳まれた新聞紙が入っていた。 「え?」 湊斗は目を何度もしばたいた。見間違いじゃない。何度見返しても、やっぱり新聞紙が入っている。 「……アディ?」 きっと、アディが悪魔の力を使って新聞を入れてくれたのだろう。 「ダメだよ、こういうことしちゃ」 小声でそっと囁く。すると、頭の中に『今度だけだよ』と声が響いた。 なんとなく。 なんとなくだけど、今迄不思議なこ...
真昼の月 | 2020.01.20 Mon 08:19
◇◇◇ ◇◇◇ 湊斗が目を醒ますと、そこは自分の家の、自分の部屋だった。 五畳ほどの部屋に、勉強机とベッドがくっついて置いてある。ベッドは二段ベッドのようにハシゴで登るタイプで、ベッドの下はタンスと本棚になっている。アディの家の寝室から見るとびっくりするくらいささやかだが、一般的な日本人から見れば、至って普通の子供部屋だろう。 いつ、どうやって自分がこの部屋に帰ってきているのか湊斗は知らない。だが、夜に家にいないことを一度も親に叱られたことがないのだから、きっと両親が帰ってくるよりも...
真昼の月 | 2020.01.19 Sun 08:01
こいつの失恋話以外の事を話題として上げても、会話として成立しない。所詮はそれだけの関係だったのだ。 それならば、やはり早急に話をつけさせてもらおうと、こちら側から口火を切った時、それまで苛立ちを滲ませていたコータの表情が一変し、続くはずだった俺の言葉をまたしても遮る。 「待った!ちょい待ち!面白くなかったんだよ!」 じれったい奴だと、さすがに閉口してしまった俺に向けられたのは、全く意味のわからない、俺の質問に対する答えとは思えない言葉だった。 「は?」 「こっちは全然うまくいかねえっ...
駄文倉庫 | 2020.01.18 Sat 21:06
たっぷり遊んだら、次は風呂の時間だ。風呂場はホテルの大浴場のように広く、硫黄の匂いがする温泉を引いているらしい。 「ほら、湊斗、肩まで浸かってよく暖まって」 美しい悪魔は、湊斗の肩が湯から出ないようにいつも見張っている。そうしてたっぷり暖まり、洗い場に上がると、アディは必ず湊斗の体をじっくりと検分した。 「どこにもケガはない?傷は?」 「ないよ。俺、誰にもいじめられてないし、父さんや母さんも俺をぶったりしないよ?」 「いいから、ちゃんと見せて」 不思議なことに、自分の家や学校で服...
真昼の月 | 2020.01.18 Sat 08:05
魔界の公爵なのに、なんで魔界に住んでいないのかと訊いたら、魔界は瘴気が強すぎて、結界を張っても人間の湊斗が立ち入るのには負担が強いからだよ、と説明された。 ここ、魔道界は、魔道士達が住む場所で、清浄すぎる天界と、瘴気の強い魔界の緩衝地帯になっているのだそうだ。 魔道士というのは主に人間界生まれた魔力の高い人間の事をいう。彼らは人間界に『間違えて』生まれてしまった異なる人種と考えて良いのだそうで、魔法が使えることはもちろん、強い魔力とそれに見合った長い寿命を持ち、その分繁殖能力は弱くな...
真昼の月 | 2020.01.17 Fri 08:08
「え?い、いきなり何だよ」 鳩が豆鉄砲を食らうというのは、こういう顔のことを言うのだろうなと、瞬きをすることさえ忘れた様子で俺を凝視してくるその反応に、思わずくすりと笑みが漏れた。 「あ……なんだよ。おまえが言うと冗談に聞こえねえっての。一瞬マジになっちまっただろうが」 俺の笑みをどう都合よく捉えたのか、ハハ…と乾いた笑いを吐き出しながら、先ほど渡したタオルでガシガシと頭を拭き始める。 「また振られたんだろう?」 「あ?」 そして、スーツの上着を脱ぎ始めたコータ...
駄文倉庫 | 2020.01.15 Wed 21:19
皆様、こっそりと新しいお話をアップさせていただきますね💦 皆様にお約束していたお話でも、宿題にさせていただいてるお話でもなく、「結晶シリーズ」でも「ここが世界の〜シリーズ」でもない、全く新しいお話となっております💦 ここのところ、全然違うお話ばかりが降ってきまして、なかなか思っていたお話が書けていないものですから、もうとりあえず、手元にあるお話はblogに上げてしまおう、と思いまして……💦 このお話は、『fujossy』で昨年開催された「完全...
真昼の月 | 2020.01.14 Tue 21:54
全1000件中 461 - 470 件表示 (47/100 ページ)